ACTは心理的柔軟性を高めていくことを目的としています。心理的柔軟性とは、不快な感情や考えがあったとしても、自分自身の大切なことに向かって行動を続けることができる能力です。

心理的柔軟性を高めていくには、いくつかのベースとなる大切なスキルがあります。

一つ目は、自分自身の行動を観察するスキルです。行動とは、生きている人間のできること全てです。ですから、食事をしたり、電車に乗ったりすることだけではなく、考えることや不安になることや緊張することなどを含んだ全てが行動です。ビデオで撮影できるような行動は顕在的行動と呼ばれます。それに対して、考えや感情などの本人にしかわからないような行動は私的な行動と呼ばれます。内的な体験(私的な行動)は、他人からも目に見えるような顕在的な行動にいろいろな影響を与えています。そのため、考えや感情などの内的な体験に気づき、観察することは、大切なスキルとなります。

二つ目に、自分自身を取り巻く環境に敏感になり、それを観察するスキルもまた大切です。これは自分自身がどのような環境の刺激に反応しているかに敏感になり、それに気づくスキルです。

三つ目のスキルは、自身の行動(顕在的な行動も内的な体験も含めて)がどのような結果をもたらしているかを分析するスキルです。これを機能分析と呼びます。

MatrixはACTの実践に使われるツールです。

ダイアグラムと呼ばれるシートを使います。このシートには縦の線と横の線に区別された4つの領域があります。縦の線は、顕在的な行動(五感を通じた体験)―内的な体験を表す軸です。上側には、目に見える行動を書きます。下側には、感情や思考などの内的な体験を書きます。Matrixを使うことで、心理的柔軟性を高めていく鍵となる顕在的な行動と内的な体験の違いに気づくことができます。

横の線は、自分が望まない体験から逃げようとする行動―大切な人や事柄に近づこうとする行動を表す軸です。左側には逃げる行動を、右側には近づく行動を書くことで、自分自身の現在の行動がどのように機能しているのかを知ることができます。

例えば、クライエントの大切なことを見つけるために、クライエントにとって大切な人や事柄について尋ねる質問をします。それらの質問に対する答えは、図式の右下に入ります。クライエントのマインドにはしばしば、自分が大切なことに近づくのを邪魔する考えや感情が現れます。これらの内的体験は、左下に入ります。誰もが目にできる行動の中で、不快な考えや感情から逃げるためにしている行動は左上に、大切な人や事柄に近づくためにできる行動は右上に書きます。

ACT MATRIXダイアグラム

この作業はセラピストとクライアントとの共同作業によって進められていきます。セラピストとのやりとりの中で、クライアントは顕在的行動と内的な体験とを区別することや環境の刺激に敏感になることや、そして自身の行動の有用性を検討することが上手になっていきます。

Matrixのとてもうまくできている点は、機能分析を視覚的に描くことができる点です。

「ACT Matrix」を学ぶワークショップの情報はこちらから↓

この記事を書いた人谷 晋二先生(立命館大学 総合心理学部)/ 北村 琴美(CBSコンサルティング)

Facebookやブログで、ACTやワークショップ関連の記事を随時更新しています。「いいね!しよう」の画像をクリックしていただくと、更新のお知らせが伝わりやすくなります。下記のシェアボタンで、お知り合いの方と情報共有も是非!