ベンジャミン先生のワークショップは、徹底して「気づき」(noticing)を促すものでした。彼のワークショップを2つの単語で表現するとしたら、「気づき」と「選択」です。参加者とのやりとりも、この二つにフォーカスして行われます。「何を気づきましたか」という問いは、ワークの中でも、参加者とのやり取りの中にも繰り返し繰り返し、登場しました。そして、この問いに対する答えに対するベンジャミン先生の返答はいつも「Yes, you notice it.」です。

ACTの根底にあるのは、自身の(あるいはクライアントの)行動に影響を与えている影響源に対して「気づき」、影響源に対する反応を「トラック」し、有用性に基づいて「選択する」ことにあります。

概念的な説明を、できるだけ削ぎ落として、「気づき」と「選択」だけにフォーカスしていくやり方は、何か日本文化に似ているように思います。

Matrixは武道でいうところの「型」のようです。「型」をしっかり習得することで、柔軟に対応することができるようになります。Matrixの型は、シンプルです。「近づく行動」と「離れる行動」の2つです。認知的フュージョンや概念化された自己、価値などの用語がそぎ落とされ、この2つの集約されていきます。それでも、ACTを学んだことがある人なら、それらの用語の示すコンポーネントをワークの中に発見することができます。認知的フュージョンを「グルグル」(stuck story)と表現しているだけです。

Matrixの特徴の一つは「言葉の合気道」(verbal Aikido)です。このやり方もひとつの「型」なのですが、「型」が「技」になるためには、多くの練習が必要です。最初は、ギクシャクして、「言葉の合気道」のプリントがないとやりとりを進めていくことができません。練習していくと、まるでダンスのようにこのやりとりを楽しむことができるでしょう。

もう一つの大きなエクササイズは「子猫のエクササイズ」(kitten exercise)です。このエクササイズを日本語にするのはとても難しい仕事です。エクササイズを3回やってみても、うまい日本語が見つかりません。時間をかけて、日本語にしていく必要があります。

この記事を書いた人谷 晋二先生(立命館大学 総合心理学部)

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