今年のワークショップは、初心者向けの「初めてのACT Matrix ワークショップ」(1 day)とすでにACTを実践している方やMatrixを使っている方向けの「ACT Matrixを使うWS」(2 days)という形で開催しました。どちらのワークショップにも20名を超える参加者があり、熱心で実践的なWSとなりました。

「初めてのACT Matrix ワークショップ」ではMatrixを学ぶ6ステップに沿ってワークが行われました。MatrixはACTを実践するためのツールですが、ACT固有の用語(例えば脱フュージョンや概念化された自己など)をあまり使わないで理解し、実践できるように構成されています。Matrixはシンプルで、気づく(noticing)という行動に徹底的に焦点を当てています。ベンジャミン先生はそのあたりを特に強調して指導をしてくれました。

心理的柔軟性を高め、自身の価値に基づく行動を促進していくことがACTの目的ですが、心理的柔軟性を高めていくためには、気づくという行動が不可欠です。初心者向けのワークショップで、エクササイズの学習に安易に走らずに、気づくという行動にフォーカスを当てているのはさすがです。

2 daysのワークショップでは、昨年参加された方もいらっしゃったので、advanceな内容でとお願いしていました。2 daysは、本当にadvanceな内容でした。「少し難しすぎたかも」という気持ちもあります。特にルール支配行動については、Matrixを使って、プライアンス、トラッキング、オーグメンタルを丁寧に解説してくれました。派生的な関係反応が強化子の機能を増大(減弱)するということをMatrixの「近づく行動」「大切な人はだれ」というトピックスと関連付けながら説明してくれました。また、関係フレーム理論のコアである一貫性(coherence)についての説明(本質的一貫性と機能的一貫性の違い)を織り交ぜながら、「有用性に基づいて柔軟な一貫性を求めていく」という点をMatrixを使って説明していただいたのには、こんなうまく説明できるのかと、驚きでした。また、Matrixを「見る」という行動を使って、視点取得のMultiple Exemplar Trainingをするというストラテジーも印象的でした。

最後には、機能分析心理療法(FAP)で用いられる臨床関連行動(CRB)を、Matrixを使って理解するというところまで、我々を連れて行ってくれました。

ワークショップが終わってから、お疲れにも関わらず何人かの参加者の方と夕食を共にしてくれました。それまでの数日間、アルコールは一切口にされませんでしたが、この時はビールを飲んでいました。彼の真摯な「近づく行動」に拍手です。

ワークショップを終えた次の日には、帰国のフライトというハードなスケジュールでも、懸命に日本のセラピストに役にたつことを提供しようとしてくれました。ホテルから京都駅までお見送りする際、二人で歩いて駅まで向かいました。その時、「2 daysの内容はアメリカやヨーロッパでは、あまり受け入れられなくてやらなくなっていたんだ」と話してくれました。確かに、理論的な内容は日本人の方が好むのかもしれません。

本当に、実りの多いワークショップでした。ぜひ、来年も来てほしいと思います。

この記事を書いた人谷 晋二先生(立命館大学 総合心理学部)