昨年から、定期的に私たちはベンジャミンのスーパーバイズを受けています。毎回大きな気づきがありますが、先日のスーパーバイズはとても興味深かったので、ご報告しようと思います。

ACT Matrixの紹介記事をまだご覧になっていない方はこちらから。

 

スーパーバイズはzoomを使って行われますが、モントリオールと日本の時差は13時間(夏時間で)ありますから、日本の午後6時半はモントリオールでは午前5時半です。ベンジャミンはその時間にはいつも起きていて、原稿を書いているから、「いいよ」と言ってくれます。そういうベンジャミンの好意に甘えてこれまでなんどもスーパーバイズをお願いしました。

今回私がとても勉強になったと思ったのは、OCD Matrixと彼が呼んだものです。OCDのクライアントさんに特有に見られるMatrixのパターンということです。OCDのクライアントさんの多くで、ACT Matrixダイアグラム左側の「離れる行動away move」として強迫的な行動が見られます。これは、考えと行動との一貫性を保とうとする機能を持っています。何かの強迫的な考えや不快な感覚を除去したり、弱めたりすることが必要でしなければならないという考えに一貫した行動をすることです。
これとリンクして「大切なことに近づく行動toword move」が、記述されることがあります。つまり、「大切にするべきだ」と考えていることと、一貫した行動が出現することです。時には「セラピストの指示に従うことは大切である」という考えと一貫した行動としてセラピストの指示(多くの場合エクスポージャーの体験をすること)に従うことが出てくることがあります(プライアンスですね)。

考えと一貫した行動をするという点では、機能的に一致しているので、toward moveに進んでいるように見えて、時にはaway moveが強まっていることがあります。
ベンジャミンの言葉を借りれば、「away move よりもtoward moveを選択できるか」ということが重要になってきます。そうするためには、トラッキングが起きるようにセラピストは、メタファーやエクササイズを使う必要があります。

もう一つ、とても勉強になったのは、Matrix ダイアグラムは、何を書いたのかというよりも、それをどのように見るのかが大切だという点でした。書かれたダイアグラムを使って、セラピストは、クライアントがそれまでに気づいていない点に気づく手伝いをするように、クライアントと一緒にダイアグラムを見るということです。ダイアグラムを書くことで、クライアントがこれまでの習慣的で、多くの場合うまくいっていない行動のパターンを、距離を置いて観察できるように、手助けしていきます。

我々のメンバーは10分ほどでMatrix ダイアグラムの紹介をしましたが、ベンジャミンはすぐにそこに起きている課題を明確に指摘し、次の方略を提案してくれます。それは、彼の豊富な臨床経験に裏付けられたものだと思いました。

この記事を書いた人谷 晋二先生(立命館大学 総合心理学部)