Dr. Bryan Rocheはアイルランド国立大学Maynooth校の研究者で、昨年Chichester Universityから名誉博士号を授与されています。関係フレーム理論から知能とは何かを検討し、オンライン・プログラムを用いて知能に関与する要因(派生的な関係反応の柔軟性など)を検討する実証的研究を行っています。また、FASTと呼ばれる新しい潜在的テスト(implicit test)の開発者でもあります。

2016年から2017年の1年間、私はアイルランド国立大学のゴールウェイ校にVisiting Researcherとして滞在していました。その時、Bryanの研究室の研究会に参加し、IRAPの実験のことについて彼の研究室のメンバーから、いろいろ教えてもらいました。その後も、2019年のACBSでも彼のワークショップに参加したりして親交を続けてきました。この時のワークショップは、「知能を行動分析する」という刺激的なワークショップでした。今回のABA Internationalにぜひ参加したかったのは,彼の招待講演 “How to Use “Implicit Tests” in Behavior Analysis Without the Smoke and Mirrors”を聞き、彼と話をしたかったからです。

アイリッシュの人たちはとても早口で、強いアクセントの英語を話しますが、Bryanはその中でも飛びぬけて早口です。IRAPやFASTの内容を知っていても、聞き取るのが難しく、テープに録音して、otter.aiというアプリを使って書き起こして復習する必要がありました。録音状態が良いものではなく、書き起こされた文書を見ても難解でしたので、スピーチの中で紹介されていた論文に当たってみました。

簡単に彼のスピーチの内容を紹介しましょう。

人間の認知と言語を研究する実験的方法として、反応時間に基づいた実験方法があります。社会心理で用いられているIATや関係フレーム理論に関する実験で用いられるIRAPなどです。これらの実験方法にはいくつかの問題点があります。1つは反応時間を測定すること、もう1つはネガティブなフィードバックが与えられることです。

IRAPは、言語的な関係づけが強い(学習歴が長い)関係は素早く反応することができるという前提に基づいています。例えば、花ー安心、という関係づけが強いなら、花-安心の関係に対して肯定する反応は、それを否定する反応よりも早くなると想定されます。

「反応時間が早い反応は、言語的な関係づけが強い」という前提に対して、Bryanは言語的な関係づけの強さは、正反応率で測定するほうが良いと考えています。その理由は、反応時間で測定するとデータのサンプリングに偏りが生じるためです(通常3000ミリセカンドを超える反応は除外されるし、300ミリセカンド以内の反応も除外される)。言語的な関係づけは遅いから間違っているというわけではないので、正誤の基準(反応の出現頻度frequency)で反応を測定するべきだという考えです。

FASTの前提となっている考えは、「2つの刺激に共通した機能的反応を作ることは、それらの刺激が共通の刺激クラスのメンバーである時、より簡単になり、刺激クラスが異なると難しくなる」(Roche, Ruitz, O’Riordan, & Hand, 2005)というものです。

時間を基盤にした関係反応の測定方法に対して、もう1つの違いは、選択反応に対するフィードバックの問題です。IATやIRAPでは,誤反応に対して×マークが提示されますが、正反応についてはフィードバックが提示されません。反応の一部にだけ罰手続きを使うことが測定しようとしている関係反応に影響を及ぼす可能性について、IRAPやIATは検討をしていないという点です。FASTでは、すべての反応に対してフィードバックが提示されます。

彼のスピーチでは、FASTを使うことで、いかに上手く関係反応の強さを測定できているかを、さまざまなデータから示してくれました。

彼のスピーチに続いて、Louigh McHughのInvited Speechがあったので、Deisy das Graças De Souza 先生(Universidade Federal de São Carlos)やSarah Cassidyたちと写真を撮って、みんなで昼食を食べに行きました。

 右からLouise McHughとご主人,Bryan Roche, 谷

ピザを食べながら、色々な話をしました。Bryanの、行動分析学の手続きとそこから得られたデータを積み上げて,帰納的に事実を積み上げていこうという研究者としての真摯な姿勢には、いつも頭が下がります。