ACBSのカンファレンスでは、プレカンファレンス・ワークショップがたくさん開催されます。CBSの傘の元、多くのセラピーがあります。ACT、RFTベースドのCBT、FAP、CFTなどです。それぞれに、2日間で12時間の集中的なワークショップが行われます。今年も有名な先生たちがたくさんワークショップを提供してくれました。かなり高額なこともあり、日本からワークショップに参加している人は少ないのですが、今年は、井上先生(立命館大学)と植木先生が参加していました。植木先生とはホテルが一緒でしたので、初日はタクシーで大学までご一緒しました。植木先生はTsuiのFAP、井上先生はLouise McHughのRFTのワークショップに出ていました。

私は、ロビン・ウォルサーのワークショップに挑戦です。最初にロビンのワークショップに出たのは2016年でその時はワークショップの高度さに圧倒されていました。世界にはこんなすごいセラピストがいるんだと自分の未熟さを痛感して帰りました。その後、マシュー・ビレットと一緒にインストラクターを務め、二人の素晴らしい臨床家が一緒になって行う、ワークショップに2回参加した経験があります。合わせると50時間以上はロビンのワークショップを受けています。彼女のHeart of ACTという本にとても感銘を受けて、彼女のワークショップを目当てに、キプロスにやってきました。

今回のワークショップのテーマは、トラウマのACTということでした。

ACBSのプレカンファレンス・ワークショップは、とてもフレンドリーに行われます。1日目のワークショップが終わったあと、植木先生とお話をしている時、植木先生がとてもみんなフレンドリーで、しっかりと拙い英語を聞いてくれるということに感謝をしていました。そして、ペアとなった人にそれを伝えると「私も数年前、そうでした。その時に私も同じように拙い英語を一生懸命きいて、理解してくれようとするパートナーに感謝をして、同じことを何年か後にしてみたいと思っていました。」というようなことを話されていました。まさに、ACBSのカンファレンスはACTの理念を実現する場所なのです。私も、全く同じことを12年前のACBSで体験し、ここが私のいる場所だと思いました。

ロビンのワークショップは、本当に体験的なものです。エクササイズが多いのはもちろんですが、一つ一つがしっかりとした目標を持って行われます。全体のテーマはトラウマですが、Heart of ACTで述べられているようなセラピストの体験とクライアントの体験の相互作用についてのものでした。セラピストとクライアントはセラピーセッションの中で、相互作用を起こしています。セラピストはクライアントに影響を与えますが、同時にクライアントもセラピストに影響を与えているのです。その相互作用を理解、分析し、クライアントのために使うことをこのワークショップでは学びました。

随所に短いマインドフルネスのエクササイズを挟みながら、9時から17時までワークショップは続きます。2日目にはヘトヘトになります。全てのワークを紹介することはできませんし(きちんと理解できていないところもあるので・・・)、ネタバレになってしまうのも良くないので、いくつかを紹介します。

セラピストとして、思わず反応してしまったようなクライアントの体験について、報告しあうエクササイズがありました。例えば、クライアントが怒り出した時、クライアントが泣き出した時、クライアントが離婚の話をしたときなど、セラピストとして反射的に反応してしまったり、避けようとしたり、軽減させようとしたりする時は、どんな時があるでしょう。

セラピストとして身動きが取れなくなる体験、クライアントもセラピストも身動きが取れなくなり、セラピーが進まなくなってしまうような時は、どんな時でしょう。約70名のセラピストたちが、各々の体験を報告しました。例えば、動機付けが低くてセラピーに乗ってこないクライアント、常にセラピストに答えを求めてくるクライアントなどです。その中から3つの特徴を持つクライアントをピックアップし、ロビンがデモンストレーションをしてくれました。参加者がクライアント役を務めます。これは身震いするほど圧巻でした。

例えば、常にセラピストに何か答えを求めてくるようなプライアンスの強いクライアントです。参加者の中で、そういうクライアントに対した時、身動きが取れなくなり、セラピーが進まなくなってしまう体験をしたことのある人がクライアントを務めます。その人自身の体験なので、とても上手にクライアント役を演じてくれます。例えば、「〜したら良いということでしょうか」「それをするとうまくいくんですね」「先生の言っていることは、〜だということですね」「どうしたら良いのでしょう」「教えてください」などなど、言い回しを変え、ジェスチャーを変えて、セラピストの指示を引き出そうとします。ロビンは、これらの行動を丁寧に見逃さずに消去していきます。そして、クライアントが自分で選択をする行動を(つまり、自分で選択することに伴う不快な体験に接触をさせながら)シェイピングしていきます。たった10分間ですがこのプロセスが見事に「見える」のです。とてもアドリブでやっているデモンストレーションとは思えません。彼女の多くの臨床経験に裏打ちされたものなのでしょう。

このデモンストレーションを参加者が理解できるようにするために、1日目のワークショップは組み上げられていたのだと思います。プライアンスの強いクライアントと対した時に、身動きが取れなくなりセラピーが進まなくなるセラピストには、一体何が、どんなプロセスがそこで起きているのだろうかという点です。セラピーのプロセスを考えるときに、クライアントのケースの概念化で示されるプロセス、セラピストの個人的な体験(学習歴)から生じるプロセス、そして、クライアントとセラピストの相互関係で生まれるプロセスがあります。

もしセラピストがこのクライアントの「〜したら良いということでしょうか?」という問いに、「その通りですね。よく私の言うことを理解していますね」と言う答えをするとしたら、それはセラピストにとってどのような機能を持っているのでしょうか。例えば、「理解されなかったらどうしよう」と言う不安を低減している、あるいは回避している機能を持っているかもしれません。そうであれば、このケースは、身動きが取れなくなることは容易に理解できるでしょう。セラピストの学習歴がここに関与しているのです。ですから、セラピストは、自身がどのような学習歴を持っているのかを観察し、分析することをする必要があるのです。そのために、仲間と一緒にそれを学んだり、スーパーバイズを通して学んでいきます。