ACT、RFTやCBSのワークショップを提供する海外のエージェントが増えてきました。オンラインで提供されるワークショップが増えてきたことで、気軽に一流のセラピストや研究者のWSを日本にいて受けられるようになってきたのはとても良いことだと思います。 今回、Contextual Consultingというイギリスのエージェントが実施するワークショップを受けてみました。このエージェントはオーストラリアの研究者、臨床家のワークショップを中心に提供しています。Louise Hayesとかラス・ハリスのワークショップなどです。今回私が受けたのはLou Laspurugatoのワークショップです(ACT Intermediate-Level Skills Masterclass: Shaping Psychological Flexibility with Process-Based Functional Analysis with Lou Lasprugato)。
確かABAIかACBSのカンファレンスで彼のワークショップに参加をして、非常に上手なセラピストだなあというふうに思いました。もう一つは今回のワークショップは、Intermediateなものですが、ACTとEEMMを使うということだったので、それに興味を引かれたことが、Louのワークショップを受けようと思ったきっかけです。
ワークショップは日本時間の午後10時から4時間行われましたので終わると午前の2時でした。なかなか大変でした。参加費は80ポンドくらいで、円安ですから12,000円くらいでした。ワークショップがどのような形で行われているのかを少し紹介したいと思います。参加登録をしてメールでズームのアドレスが送られてくるのですが、非常にわかりやすい案内でした。つまり、時差が当然ありますので時差の間違いがこんな起きないようにきちんと日本の現地時間で何時に開催されるのかっていうのが分かるようにセットアップされていました。
それから、ちょっと難しいなと思ったのは、字幕がつかないということですね。これはPerspective IrelandというRFTを中心にした、バーンズ先生たちが運営している会社のワークショップもそうでしたが、英語の字幕もつかないので、これはなかなかハードですね。我々英語が母国語でない者がワークショップに参加するときのハードルになるかなと思います。Praxisというエージェントの方は、英語の字幕がつきます。いずれのワークショップでも事前に資料が送られてくるっていうことはなく、その当日にチャットボックスにドロップされるというような形で資料が提供されます(あるいはワークショップ終了後に)。事前に資料が提供されないので、予習をすることもできません。オンラインでの参加は、英語が母国語でない人にとってはハードルが高いと思いました。私は 海外のワークショップに参加をする時には、オッター(otter.ai)というソフトを起動させて参加をします。ディクテーションをやってくれるソフトです。画面の2/3にズームを出し、1/3にオッターの画面を出しておくと英語字幕が付いているような感じになります。
Louのワークショップは 非常によく構成されていました。海外のエージェントがやっているワークショップは質が高いです。ロウはとてもきれいに英語をしゃべってくれるし、話も整理されているので、字幕なしで聞いてもなんとかついていけるような感じです。オンラインのワークショップの場合はやはり、話の筋道がクリアであるというのはとても重要な要素なのだと思います。そういう点では、Contextual Consultingという会社もPraxisも、Perspective Irelandのワークショップも非常によくオーガナイズされた内容だと思います。
さて、ワークショップの中身についてのお話に進んでいきたいと思います。ワークショップはプレゼンテーションがあり、簡単なエクササイズがありました。それからグループ・ロールプレイが二回ありました。ワークショップの内容は、そのグループ・ロールプレイができるようになるまでのプロセスを説明して行くという構成でした。今回のポイントは ACTの6つのコア・コンポーネントを EEMMのモデルに対応させてやってみるというところだったと思います。EEMMでは、次元(やレベル)とシステムのマトリックスの中に臨床的な課題を整理して行くわけですけれども、今回、Louが示してくれたのは6つの次元の中で機能分析をするという点だったと思います。
EEMMの6つの次元とは、認知、感情、注意 セルフ(自己)、顕在的行動とモチベーションです。そのどこにクライアントの課題があるのかをワークシートを使いながら整理をして行くというのが紹介されました。そのワークシートが非常にシンプルで、フレキシブル(柔軟)かインフレキシブル(非柔軟)かという二つのスコアでクライアントの問題を分けていきます。例えばクライアントのある言動が、認知のレベルのフレキシブルな言動であるとか認知や注意の次元のインフレキシブルな反応であるかとかをスコアしていくことによってそのクライアントさんの行動の機能的な分析をしようというやり方です。これは非常に面白いやり方だなと思います。例を挙げると、「もし、この病気が治らなかったら、仕事を続けられなくなる」という行動(発言)は、認知の次元のインフレキシブルな反応であると分析をすることができます。それを次のようなシートに整理をしていきます。
| 発言 | 認知 | 感情 | 自己 | 注意 | 動機づけ | 顕在的行動 |
| F・I | F・I | F・I | F・I | F・I | F・I | F・I |
もちろん、この発言が柔軟な行動かどうかは、その機能によって違ってきます。例えば、「もし,この病気が治らなかったら、仕事を続けられなくなる」という考えが、回避行動を引き起こしていれば、非柔軟な行動と考えられますが、「もし、この病気が治らなかったら、仕事を続けられなくなる」という考えに、ただ気づいているだけという場合は、柔軟な行動ということになります。このコーディングをすることには、ACTの文脈的で機能的な視点が必要です。
このようにして、クライエントのセッション中の発言や行動(姿勢や表情を含めて)をEEMMの6つの次元に整理していくというのが、ロウのアイデアです。
クライエントの行動を機能分析して、次にセラピストが行う介入(柔軟性を高めるための試み)を、柔軟な行動のモデルを示す(model)、滋養的あるいは嫌悪的なプロパティを喚起する(evoke)、強化する(reinforce)に分けていきます。さらにモデル、喚起、強化というカテゴリーは、オープンになる、気づく、従事する、というラス・ハリスのトリフレックスのモデルを用いて、細分化されています。例えば、「その考えをあなたが持ったとき、どのようなことがあなたの中で起きていますか? それに気づいてみましょう」と言うのは、オープンになるということを喚起する介入というように、分類できるでしょう。また、「あなたが行っているその行動にはどんなクオリティがありますか?」という問いは、価値を明確化し(価値づけられた行動に従事し)、滋養的なプロパティを喚起することにつながるでしょう。
モデル、喚起、強化という3つのカテゴリーとオープンになる、気づく、従事するという3つのカテゴリーで、合計9つのマトリックスができます。それぞれのマトリックスに関連する質問の仕方が、例示されてシートに整理されていて、これはセラピストのトレーニングに、とても役に立つと思います。つまり、セラピストの言葉かけに、9種類の言葉かけがあって,目的に合わせてそれを意図的に使っていくわけです(ワークショップでは,サンプルになる質問のリストが添付で紹介されました。その質問のいくつかは、Matthieu Villatteの ”Mastering Clinical Conversation” からのものですね)。
とても興味深い整理の仕方のアイデアだと思います。4月にもLouのワークショップが予定されています。お勧めです。

